外貨建取引とは
外貨建取引とは、税法上、「外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れ、剰余金の配当その他の取引」を言います(法人税法第61条の8)。
「外国通貨で支払が行われるべき取引」を指すため、例えば、資産購入時の請求額が、請求書上は外貨で表示されていたとしても、その支払を日本円で行うこととされている場合には、外貨建て取引には該当しないので、ご注意ください。
以下で述べるように、外貨建取引の換算方法は法令で定められています。換算方法については、選択肢がある場合もあれば、ない場合もあること、また、仮に選択肢がある場合で法定の換算方法以外の方法を選択する場合には所定の手続きが必要であることも認識しておく必要があります。
なお、為替が著しく変動した場合や消費税の取り扱い、為替予約など、外貨建取引に関する税制や会計基準あるいは税務会計に関する論点は本稿で解説するポイント以外にも多々存在します。また、為替リスクを取引当事者のいずれが負うか、仮に負うことになった場合にどのように対処するか、といった点は、ビジネスの成否を左右しかねない重要な問題です。そのため、外貨建取引を行う際は、税務会計の観点のみならず、ビジネスの観点からも慎重な判断が求められることになります。
外貨建資産及び負債の期末評価
外貨建資産の期末評価方法には、「発生時換算法」と「期末時換算法」があります。
「発生時換算法」:期末時に有する外貨建資産等について、当該外貨建資産等の取得又は発生時に用いた外国為替相場により換算した金額により評価する方法
「期末時換算法」:期末時に有する外貨建資産等について、期末時の外国為替相場により換算した金額により評価する方法
いずれの方法を使用するかは、その外貨建資産等により決められています。具体的には、下記、(1),(2)②,(3)については、いずれか法人が選定した方法を適用できますが、法人が特に選定しなかった場合には法令で定める方法となります(以下で「法定」と記載している方法)。
なお、法令で定める方法以外の方法を選定する際は手続きも必要です。具体的には、最初にその選定の対象となる外貨建取引を行った日の属する事業年度の確定申告書の提出期限(仮決算による中間申告書を提出する場合にはその中間申告書の提出期限)までに届出をすることが選定手続きとなります。
(1) 外貨建債権及び外貨建債務
発生時換算法又は期末時換算法(法定:短期→期末時換算法、長期→発生時換算法)
(2) 外貨建有価証券
① 売買目的有価証券:期末時換算法
② 売買目的外有価証券(償還期限及び償還金額の定めのあるもの):発生時換算法又は期末時換算法(法定:発生時換算法)
③ ①及び②以外の有価証券:発生時換算法
(3) 外貨預金
発生時換算法又は期末時換算法(法定:短期→期末時換算法、長期→発生時換算法)
(4) 外国通貨
期末時換算法
外貨建て資産等の円換算 – 換算レート
円換算は、原則として電信売買相場の仲値(TTM, Telegraphic Transfer Middle Rate)により行うこととされています。ただし、継続適用を条件として、売上その他の収益または資産については電信買相場(TTB, Telegraphic Transfer Buying Rate)、仕入その他の費用または負債については電信売相場(TTS, Telegraphic Transfer Selling Rate)によることができます。
また、継続適用を条件として、合理的と認められる場合には、次のような為替相場も使用することが可能です。
(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日のTTB若しくはTTS又はこれらの日におけるTTM
(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間におけるTTM、TTB又はTTSの平均値
外貨建取引における適格請求書の記載事項
外貨建取引であっても、適格請求書に記載が必要な事項は以下の通りで、一般的な取引と変わりません。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産 の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適 用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
なお、⑤「税率ごとに区分した消費税額等」を除き、外国語や外貨で記載しても問題ありませんが、⑤「税率ごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります。
(2024.12.14執筆)
参考記事
法令解釈通達 第13章の2 外貨建取引の換算等 第1節 外貨建取引に係る会計処理等|国税庁 (nta.go.jp)
C1-45 外貨建資産等の期末換算方法等の届出|国税庁 (nta.go.jp)
適格請求書QA 問68 外貨建取引における適格請求書の記載事項|国税庁 (nta.go.jp)
法人税法 第61条の8、9 法人税法施行令 第122条の7