リース取引の会計・税務上の取り扱い

 リース取引は、会計の世界においても、税務の世界においても、複雑なルールが設けられており、その会計・税務処理に当たっては注意が必要になります。

 本稿では、まず簡単に会計上のリース取引の取り扱いを概観したうえで、法人税、消費税の簡単からも、リース取引の定義やその取扱いについて解説していきたいと思います。

 なお、リース取引には当然、貸し手と借り手が存在しますが、一般的に借り手の方が多く、処理に悩む機会も多いことから、本稿では借り手の処理にフォーカスして記述しています。

会計上のリース取引

 会計におけるリース取引については、その契約内容により、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分されており、ファイナンス・リース取引は、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引に区分されます。 ファイナンス・リース取引は、原則、売買処理、オペレーティング・リース取引は賃貸借処理となります。ただし、中小企業については「中小企業会計指針」を適用することでより、所有権移転外ファイナンス・リース取引についても賃貸借処理を適用することが可能です。

法人税法のリース取引

 法人税法上のリース取引の処理には細かいルールが設けられています。特に、そのリース取引が売買取引として処理すべきなのか、賃貸借取引として処理すべきなのかの判断は、実務において重要かつ注意が必要な部分になります。

 そこでまず、法人税法上のリース取引の定義を確認してみましょう。法人税法上のリース取引とは、資産の賃貸借(土地の賃貸借のうち一定のものを除く。)のうち、次の要件のすべてを満たすものをいいます。

1.リース期間中の中途解約が禁止されているもの、または賃借人が中途解約する場合には未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(約90%以上)を支払うこととされているものなどであること

2.賃借人がリース資産からもたらされる経済的な利益を実質的に享受することができ、かつ、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること(注)

(注)リース期間(契約の解除をすることができないものとされている期間に限る。)において賃借人が支払うリース料の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額の約90%相当額を超える場合には、「リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること」に該当することになります。

 また、リース取引はさらに所有権移転リース取引と所有権移転外リース取引に区分されます。法人税において、所有権移転外リース取引とは、法人税法上のリース取引のうち、下記のいずれにも該当しないものを言い、所有権移転リース取引とはそれ以外のものを言います。

1.リース期間の終了時または中途において、リース資産が無償または名目的な対価の額で賃借人に譲渡されるものであること。

2.リース期間の終了後、無償と変わらない名目的な再リース料によって再リースをすることがリース契約において定められているものであること。

3.リース期間の終了時または中途においてリース資産を著しく有利な価額で買い取る権利が賃借人に与えられているものであること。

4.リース資産がその使用可能期間中その賃借人によってのみ使用されると見込まれるものであること、または、リース資産の識別が困難であると認められるものであること。

5.賃貸人に対してリース資産の取得資金の全部または一部を貸し付けている金融機関等が、賃借人から資金を受け入れ、その資金をしてその賃借人のリース取引等の債務のうちその賃貸人の借入金の元利に対応する部分の引受けをする構造になっているものであること。

6 リース期間がリース資産の法定耐用年数に比して相当短いもの(賃借人の法人税の負担を著しく軽減することになると認められるものに限る。)(注)であること。
(注)「リース期間がリース資産の法定耐用年数に比して相当短いもの」とは、リース期間がリース資産の法定耐用年数の70パーセント(法定耐用年数が10年以上のリース資産については60パーセント)に相当する年数(1年未満の端数切捨て)を下回る期間であるものとされています。

法人税法におけるリース取引の基本的な取り扱いと留意点

 法人税法上のリース取引(平成20年4月1日以後に締結する契約に係る賃貸借取引)は、そのリース資産の賃貸人から賃借人への引渡時に、当該リース資産の売買があったものとして取り扱います。また、いわゆるセール・アンド・リースバック取引においては、その一連の取引が実質的に金銭の貸借であると認められる場合、その売買はなかったものとなし、金銭の貸付けがあったものとして取り扱うこととされています。 なお、上記の「法人税法上のリース取引」の要件を満たさないリース取引については、売買取引ではなく賃貸借取引を行ったものとして、リース料を支払うべき日においてリース料相当額を費用処理することとなります。

リース取引の減価償却と関連する注意事項

法人税法上のリース取引の売買があったものとされる場合には、その賃借人は、そのリース資産を自己の資産として償却します。

 この場合、所有権移転リース取引にかかる資産である場合には、資産の種類に応じてその法人が選定している償却方法によります。 一方、リース資産が、所有権移転外リース取引にかかる減価償却資産に該当する場合、償却方法はリース期間定額法が適用されます。また、この場合には、圧縮記帳、特別償却、少額減価償却資産の損金算入、一括償却資産の損金算入などの制度の摘要はないので、注意が必要です。

消費税法におけるリース取引の取り扱い

 リース取引の内容によって、消費税の処理も異なるので注意が必要です。

 リース取引による資産の譲受けが課税仕入れに該当する場合には、その課税仕入れを行った日はそのリース資産の引渡しを受けた日となります。

 したがって、その課税仕入れについては、そのリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において仕入税額控除の規定の適用を受けることになります。

 上記の「法人税法上のリース取引」の要件を満たさないリース取引は、その支払うべき日の属する課税期間において、仕入税額控除の適用を受けることになります。 なお、所有権移転外リース取引について、賃貸借処理を行った場合についても、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として消費税の申告を行っているときは、その支払うべき日の属する課税期間において、仕入税額控除の適用を受けることになります。

(2024.11.30執筆)

参考記事

No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)|国税庁 (nta.go.jp)
No.5704 所有権移転外リース取引|国税庁 (nta.go.jp)
No.6163 リース取引についての消費税の取扱いの概要|国税庁 (nta.go.jp)
所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い|国税庁 (nta.go.jp)

この記事を書いた人

Nori

現在40歳、MYN税理士事務所の代表です。
食べることが好きすぎてマラソン&キックボクシングで日々調整。
マイブームは歴史、哲学、算数。だいたい毎日楽しんでます!